介護福祉士が分かりやすく解説する認知症の種類・症状・対応方法
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アルツハイマー型認知症の原因 予防について
アルツハイマー型認知症とは認知症の中でも患者数が最も多くその割合は全体の約6割になります。
男性よりも女性に多くみられる傾向があります。高齢化に伴い罹患者数も増加しています。
アルツハイマー型認知症は、脳に特殊なたんぱく質が溜まり神経細胞が壊れることによって
脳に障害がおこると言われています。
以前は、加齢に伴う脳萎縮が原因だと考えられていましたが、現在では上記のことが原因と
なっている「病気」という考え方が主流となってきています。
アルツハイマー型認知症になるとまず脳の記憶をつかさどる器官である海馬が破壊され脳の萎縮が始まるため、記憶障害が症状としてでてきます。
多くの研究で、中年期の生活習慣病が高齢期の認知症発症に関係があるという報告が出ています。
とくに糖尿病の場合は、発症リスクが2倍になるといわれています。
アルツハイマー型認知症のサイン・症状
アルツハイマー型認知症では、最初に記憶障害が症状として出てきます。
適切な判断が出来なくなってきたり、言葉が出ないなどのことも出てきます。
アルツハイマー型認知症でよく見られる症状は以下の通りになります。
物忘れに自覚があるか?
認知症による物忘れは日常生活に影響をあたえるようなものになります。
財布や携帯やカギなどをどこに置いたか忘れるということは日常的にあると思いますが、
認知症になると忘れたということ自体が分からなくなります。
出来事を思い出せるか?
昨日、買い物に行ったなどの出来事を「あれ。そうだっけ?」などといって忘れていることもあると思いますが、誰かに詳細を聞くと「そうだったな。」と大体思い出せます。
しかし、認知症になると昨日の出来事を伝えても全然思い出せないことが多くなってきます。
判断力の低下
日常生活における判断力も低下してきます。「季節にあった服を選べなかったり」、「料理する際に調味料を何を使えばいいのか分からない」、「お金の管理が出来ない」など普段生活している上で今まで何気なく行ってきたことが出来なくなってきます。
時間、場所が分からなくなる
今日が何月何日何曜日なのか季節など日時に関することが分からなくなります。
自分の居場所など場所に関することも分からなくなり、「出かけたけど自宅がどこにあるか分からない」、「どういう理由で出かけたのか分からない」、「家に戻れなくなる」ということがおきてきます。
その他の症状
お風呂に入らないなどの介護者の関わりを拒否する。
「介護拒否」などの周辺症状(BPSD)が出てきます。
脳血管性認知症とは
脳血管性認知症とは、脳梗塞やくも膜下出血脳出血などの脳の血管の病気が
原因になり引き起こされます。
認知症全体の約2割が脳血管性認知症でアルツハイマー型認知症の次に多い認知症です。
アルツハイマー型認知症は、ゆるやかに進行しますが脳血管性認知症は段階的に
進行するのが特徴です。
脳血管性認知症の方は自分が認知症だという認識がある場合が多く、精神的な配慮が
とても大切です。
脳血管性認知症の原因
先述したとおり脳血管性認知症は脳梗塞やくも膜下出血脳出血などの脳の血管の病気が
原因になり引き起こされます。
脳内の血管の詰まりや出血などが原因で脳細胞が壊れてしまい、壊れた部分が機能しなくなることで認知症の症状が現れてきます。
血管の病気を引き起こす原因は動脈硬化です。
動脈硬化の危険因子として、高血圧、糖尿病、心疾患、脂質異常症、喫煙などがあります。
血管の病気は、喫煙や生活習慣病が主な危険因子となるので健康診断の血液検査などで
脂肪やコレステロールの数値が高い場合や肥満を指摘された方は注意が必要です。
脳血管性認知症の症状
感情失禁
感情がコントロールできず、会話の途中で急に泣いたり、怒ったり笑ったりする症状がでます。
まだら認知症
脳血管性認知症は、脳がダメージを受けた部分に機能的な障害がでてきます。
逆に考えるとダメージを受けていない部分は正常に機能しています。
記憶力や判断力、理解力は比較的保たれている場合が多いです。
会話の内容に違和感が感じられないが簡単な計算が出来なくなっている。
また、日中ボーっとしていて、話しかけてもうわの空で返答がないような抑うつ状態だったのに急にスイッチが入ったかのように話しかけに対する反応が正常に戻ったりすることもあります。
まだら認知症はよく聞く言葉ですが、アルツハイマー型認知症のような認知症の種類ではありません。
1日の中で意識がはっきりしている時とそうではない時がある症状のことを指してまだら認知症といいます。
脳性麻痺
身体の片側が麻痺して自由に動かせなくなる片麻痺。
細かい動きができなくなったり、コントロール出来なくなる運動機能の低下。
暑さや寒さに対する感覚が鈍ったり感じなくなったり、痛みを感じなくなる感覚障害。
食べ物や飲み物を飲み込みづらくなったりする嚥下障害。
日常生活において何気なく行っていたことができなくなる障害です。
言語障害
運動性失語(ブローカ失語)と感覚性失語(ウェルニッケ失語)の2種類があります。
運動性失語は、言葉は理解できますが、言葉を上手く話せない、言葉が上手く出てこない、
言葉の間違いが多くなる、全く発語が出来ない。などの症状が出てきます。
感覚性失語は、言葉は普通に話せるが話が理解できないという症状になります。
・その他
上記にあげた症状が主なものですが、アルツハイマー型認知症のように記憶障害・見当識障害などの認知障害も出てくることもあります。
脳血管性認知症の方を介護する際の心配り
脳血管性認知症になると脳のダメージによって身体的・精神的な障害がでてきます。
片麻痺など運動機能に障害がでてくると生活全般において介護が必要な状態になります。
今まで普通に生活してきたのに脳の血管の病気により急に介護が必要な状態になります。
本人は自分の病気に対して認識出来るので精神的なダメージやショックが強いです。
自分自身のことや周囲のことに対してもストレスを感じやすくなるため介護者は身体面だけではなく精神的な配慮がとても大切になります。
レビー小体認知症とは
レビー小体型認知症とは、脳の中に「レビー小体」という特殊なたんぱく質が脳内で増加
することで発現する認知症をレビー小体型認知症といいます。
レビー小体型認知症の原因
脳内の中にレビー小体という特殊なたんぱく質が脳の大脳皮質や、脳幹にたくさん集まってしまいます。
レビー小体が集まった場所は正常な神経細胞が壊されて減少しているため神経が正常に働かなくなってしまい様々な症状が現れてきます。
レビー小体は、パーキソン病患者の脳内にも確認されています。
男女比は、1:2で男性にやや多い傾向があります。
年齢は、65歳以上になると発症することが多いです。
レビー小体型認知症は、進行が早く初期から終期まで10年未満の事が多いです。
なぜ、脳内にレビー小体が蓄積していくのか、まだ解明されていません。
大脳皮質
(人がものを考える時の
中枢的な役割を持っている場所)
脳幹
(呼吸や血液の循環に
携わる人が生きる上で重要な場所)
レビー小体型認知症の症状
幻視
レビー小体型認知症の初期に出現が多いのが幻視です。
幻視とは、見えないものが見えたりすることを言います。
そこにはいない虫や動物、人などが見えていて「あそこに人がいる。」などの発言がみられてきます。
錯視
幻視とともに症状が出やすいのが錯視です。錯視とは、実際あるものに対して
色・形などが違うように見えてしまいます。
壁にあるシミに対して、「あそこに虫がいる。」などと言うような感じで実際あるものとは違う風に見えてしまいます。
妄想
幻視や錯視の出現に伴って妄想が症状として表れてきます。人がいないのに見えているので
「今日もずっとあの男がわたしをみている。」などの発言が見られてきます。
うつ症状
レビー小体型認知症の初期で見られるのがうつ状態です。他にレビー小体型認知症の
特徴的な症状が無い場合はただのうつなのでは?と思われることも多いです。
認知機能の変動
時間や場所、家族などが認識出来ないなどの症状がでてきます。
日や時間によって症状があるとき、無いときと症状がその時その時で変動します。
パーキソン病のような身体症状
動作が小さく、遅くなってきます。歩くときに歩幅や腕の振りが小さくなってきます。
また、手足の震え(振戦)が出てきます。
座っているのに手足が細かく震えていたり、身体のバランスもとれなくなってきて
少しふらついた時に体勢を立て直せなくて転倒することがあります。
レビー小体型認知症の期間と対応方法
レビー小体型認知症は、発症すると10年くらいの期間で進行していきます。
初期では、精神症状が主に現れてきますが、幻視・錯視などは、本人には見えているため、一方的に否定するのではなく話を合わせて問題を解決するようにしていくのがいいでしょう。
身体症状は、徐々に進行していきますが、動きがゆっくりになるので急かさないようにしましょう。
歩幅が狭く、動きがゆっくりになってくると転倒するリスクも高くなってきますので段差の無い環境にする。
歩行時は見守りを行う。
長時間外出する際は車イスを利用するなども必要になってきます。
症状の進行とともに身体への介護が増えていきますので今まで出来ていたことが出来なくなった時は病状が進行しているという理解が必要です。